色んな客が!

  昨日の午前中、田園調布のあるお宅に呼ばれた。
 声を掛けてから、門の前でお客が出てくるのを待つ。それほど大きい家ではないが
 由緒がありそうな数寄屋のお宅。
 奥方らしき女性が「申し訳有りませんねぇ、着替えも済んでおりますので
 もう来ます。どうぞ召し上がれ」って、可愛いお盆に湯のみ(有田?)を。
 冷えた抹茶に小さい氷がひとつ。 美味しい。そして甘かった。

 「大変お待たせしました。どうぞ、お願い致します」って頭を下げて挨拶された。
 歳の頃、80前後の背筋のピンとしたおじいちゃま。アスコットタイにハット、ステッキを持って。
 お洒落なの。杖じゃなくてステッキだよ。
 余りに丁寧に挨拶をされて、
「はいっ、いえっ、どうぞお乗りください」ドギマギしながらドアを閉めると
「主人を宜しくお願いします。いってらっしゃい」ってお辞儀をされて
 俺も車に乗り込んで「おはよう御座います、どちらにいらっしゃいますか?」
 「五反田の逓信病院へお願いします」
 「はいっ、解りました逓信病院ですね」
 「逓信病院が直ぐお解りになるのは貴方もそこそこのお歳でいらっしゃる。
 最近は皆さん、NTT病院とか仰るけど」だって。
 「まだ病院には時間が有りますので、済みませんが、目黒通りを行って白金迎賓館を通って下さい」
 「はい、白金迎賓館ですね」
 「白金迎賓館もお解りになる!最近の方は皆さんご存じないので寂しく思っていたんですよ」

 色々お話を伺うと、お父上もおじい様も宮内庁に任官していて、昔、子供の頃、白金庭園美術館が「朝香宮邸」だった頃、中の官舎に住んでいたのだそうだ。
 「中々、こちらに来る機会も無いので、良かったら少々散歩にお付き合い願えませんか?」
 「はい、私で宜しければ」 お子さんがいらっしゃらないそうなので、車で一寸来るという事も出来ず、30年位前に来たきりだそうだ。
 メインの建物より、裏の内所の方を懐かしがっていたようだ。
それから、病院へお送りして(定期健診で、年齢は84歳だって)車を降りるとき、
 「いやー、今日は思いも掛けず、白金にも行く事が出来て、お付き合いして下さって有難う。
 もし良ければ、又、お世話に成りたいので、貴方の連絡先をお教え頂けないでしょうか?」だって。お教えして、駕籠メーターを見ると、¥4000台
すると内ポケットから2枚の封筒を出して、一枚の封筒を
 「今日は有難うございました、これお車代です」中を見ようとすると
 「其の侭で結構です」って降りて行かれた。
 なにしろ、丁寧で上品なんだ。 俺みたいな駕籠屋風情にも上品に接してくれると
 只、恐縮しちゃって。そういう年配の方って少ないけど、格好いいな〜!


 処で、封筒の中は指が切れそうな一万円札だった。
 後一枚の封筒は何だったんだろう?


*はま様、今旬で旨い刺身って言ったら何?